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1952年宣教開始  賀茂川教会はプロテスタント・ルター派のキリスト教会です。

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牧師メッセージpastor'S message


  

          
「わたしたちは神に贖(あがな)い出された
      神の家族です」
 
                      
大宮 陸孝 牧師    

 
 「イエスは、「わたしの母、わたしの兄弟とはだれか」と答え、周りに座っている人々を見回して言われた。「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。神の御心を行う人こそ、わたしの兄弟、姉妹、また母なのだ。」
        マルコによる福音書3章33節~35節
 
 統一教会の問題が再浮上し、信仰と家族の問題を改めて考えさせられています。今から77年前の敗戦後「家制度」が廃止され、経済発展に伴う都市化と共に労働力を提供する若年層は農村を離れて都市部に流出し、それまで家族をまとめていた生産の場は都市の企業や工場に移り、そこで新たに夫婦を中心とした親子から成る核家族を形成し、さらに他方では高齢化が進み、老齢者のみの家族や独り暮らしの単独世帯も増え続けています。そして一般的な傾向として、離婚率が上昇し、"空の巣症候群"に陥る年配夫婦や熟年離婚も増えています。そのほか多様な家族構成へと展開して行くことになり、事実上家族がばらばらな生活となっていく傾向が強くなっています。そういうこともあってか、家庭内離婚や家庭内暴力、児童虐待など否定的な側面が表面に現れてきているように思われます。

 家族の形態や構造は時代の変化と共に変わります。それと同時に家族の不変で本質的な機能とはなんなのか、愛や信頼を確保し、共に喜びを分かち合い、病気、事故、災害、そして死に際しても家族が身近な支えであり必要であるとするならば、そのシステムをどのようにして保持していくのか、家族システムのそのようなスキル形成(人格形成・教育)をどこに求めるべきなのかをしっかりと再確認することが喫緊の課題ではなかろうかと思うのです。

 イエスの家族との関係を描いている福音書の箇所はそう多くはありませんが、上記の聖句はそのひとつであります。イエスの弟子たる者の道が説かれ、神のみ心を行う者こそ弟子にふさわしく、イエスの家族なのだとイエスは言われます。注目しなければならないのは、ここにイエスの家族が出てくることです。ここに描かれているイエスの家族は、イエスに対して決して好意的に関わっているのではないということです。

 イエスの教えを聞こうと集まってきた群衆の対応に忙しくしているイエスを見て、「身内の者たちは」イエスが気が狂っていると思って、「取り押さえにやって来た」(21節)というのです。そしてもう一つの話しも、群衆がイエスの話しを聞いていたところへ、イエスの母と兄弟たちがやって来て、「人をやってイエスを呼ばせた」(31節)というのです。イエスの母と兄弟たち家族は教えを聞いている人々の中には入ろうとしないで、外に立ったままであったというのです。この時点ではイエスの家族は、イエスの行動とその教えには同調できない、部外者の立場を取っているのです。

 イエスの父ヨセフは温厚で信仰深い人であったようであります。イエスやその他の子たちがまだ小さかった頃に亡くなったと思われます。イエスは母子家庭で青少年時代を過ごし、ナザレで農具造りの大工をしていた父、ヨセフに代わって、若くしてその仕事を受け継いで家計を助け、やもめの母を支え、兄弟姉妹たちにも気を配って面倒を見ていたのです。その生活は貧しいものであったにしても、家族は一つにまとまり助け合い、支え合って懸命に生きてきた家庭であったと思われます。それが今やイエス対母マリアと兄弟たちという対立と緊張関係がこの家に生じている。宗教的なものからこの軋轢(あつれき)が生じている。宗教上の相違から来る対立や違和感はその根が深くそう簡単には和解できるものではありません。

 イエスは神に召され、やむにやまれぬ思いで立ち上がったのです。たとえ自分の母が反対しても思い直すことも後に引くこともしません。かといって自分の家族にも理解されず、受け容れられない運命でもありました。それは神に召された者の宿命的な内的苦闘でありました。けれども、イエスはご自分の家族を忘れたのでも、見捨てたのでもなく、ましてや自分の出世のために家族を踏み台にしたのでもありません。愛して止まなかった彼らへの愛は本物の愛でした。彼らとの小さな血縁の愛情を決して無にすることをしないで、自らのもっと大きな愛で、彼ら(家族)と更に全世界の人々を包み込んだのです。

 十字架の贖いによって全世界の人々を救い出すことが神の御心でした。全世界の全ての人々を神の家族とするために一時源家族を離れただけのことだったのです。後にイエスの家族はそのことを理解し、重要な初代教会のメンバーとなって行きます。

                      2023年3月1日


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